半兵衛にございます。先日、利家殿の不遇時代の友人分類法を御教え致しました。本日も不遇経験を生かしたエピソードを御紹介致します。
それは利家殿の臨終間際のお話です。利家殿は経理担当を呼んで、
『今まで、わしのために出した裏金関係の書類を持ってこい』と言いました。担当はびっくりし、
『な・・・何のためでございますか?』と顔色を変えました。
担当は
『殿は臨終の際に、私の経理方法をお咎めになるのだろうか?』と震えながら、書類を抱えて持ってきました。病床で利家殿は一枚一枚の紙に鋭い眼を走らせ、書類を見ながら二つに分けたのです。そして全て見終わると、担当に言いました。
『知らなかったぞ・・・。ここまで御主に苦労させていたとは・・・』『は?』『苦労をかけた。すまない、礼をいうぞ・・・。』『そんな・・・仕事でございますから』『ところで・・・』そらきた!と担当は真っ青になりました。しかし、利家殿はこう言いました。
『二つに分けた書類のうち、こっちはこの理由で支出できる。が、こっちは無理だ。重臣と相談してつくり直せ。この書類は焼いてわしの棺に入れろ。わしが冥土にもっていく!』そういって利家殿はこんなことをつけ加えたそうです。
『たとえ息子がわしの跡を継いでも、二代目には二代目の方針があり、新しい側近も育つ。そうなるとわしの側近だった者が逐われる。逐う理由の一つは前代時代の不正支出だ。苦労したお主にそんな思いをさせたくない。きっちり決着をつけて、わしの死後、お主が人事上の不利益を被らないようにしていきたいのだ。わしの息があるうちに早く書類をつくり直せ。判を捺して、花押を書く。』担当は声を失って平伏し、肩をふるわせていたそうです。利家殿の死後、この担当は逐われずに栄進したそうです。
また、死ぬ直前、利家殿の妻・
まつ殿が利家殿に、
『これをお召しください』と経カタビラをすすめました。ところが、利家殿は笑って退け、
『わしは仏のゆるしを乞うような悪いことは、何ひとつしていない!冥土で邪魔する者は斬る!』といって刀を抱いたまま死んだといわれております。死に面してまで、『ばさら精神』、『かぶき精神』を貫いて死んでいった律儀さには、頭がさがりますな・・・。